介護の基本
問題19
茶道の師範だったFさん(87歳、女性、要介護3)は、70歳の時に夫を亡くし、それ以降は一人暮らしを続けていた。79歳の頃、定期的に実家を訪ねていた長男が、物忘れが目立つようになった母親に気づいた。精神科を受診したところ、アルツハイマー型認知症と診断された。昨年から小規模多機能型居宅介護を利用しているが、最近は、宿泊サービスの利用が次第に多くなってきている。Fさんは来所しても寝ていることが多く、以前に比べると表情の乏しい時間が増えてきている。
介護福祉職がFさんの生活を支えるための介護として、最も適切なものを1つ選びなさい。
選択肢
1.Fさんが安心して暮らせるように、長男に施設入所を勧める。
2.夜間に熟睡できるよう、日中は宿泊室に入らないように説明する。
3.長く茶道を続けてきたので、水分補給は緑茶に変更する。
4.心を落ち着かせるために、読書を勧める。
5.茶道の師範だったので、お茶のたて方を話題にする。
オリジナル解説 byまぃせ
1.Fさんは今のサービスに不安があるから来所しても寝てしまっていたり、表情が乏しくなったりしているのでしょうか。もしそうであったとしたら、施設に入ればいいという対処的な対応が今のFさんの課題解決になるのでしょうか。生活環境を変えてしまうことへの不安はないのか、といった点が気になるので、×です。
2.要介護3のアルツハイマー型認知症の方にこのような内容の説明をすることがFさんの課題解決につながるとは考えにくいので、×です。
3.“茶道の師範だったFさん”という個人因子を汲み取る介護福祉職側の努力は見えますが、茶道の師範=緑茶を飲む、と主観で判断し、変更して良いものでしょうか。飲み物を選ぶことについて、Fさんの選択の自由があるはずです。
利用者の自己決定を支援していくという視点は、介護においては外せない重要な基本となりますので、×です。
4.Fさんの心を落ち着かせるためになぜ読書という方法をとったのか、という根拠が事例の内容からは見えてきませんので、×です。
5.“茶道の師範だったFさん”という個人因子を汲み取って、コミュニケーションに活かすという視点です。Fさんが興味のありそうな話題を提供することが刺激となり、覚醒時間が増えたり、表情が豊かになる可能性がありますので、〇です。
というわけで、正答は選択肢5となります。
試験問題を解く際には、利用者の尊厳を保持し、自立支援を行っていくという介護の基本原則に則った基本視点を持つことが重要なポイントとなります。
今回の問題では、Fさん自身の強み(ストレングス)に着目することが尊厳の保持につながり、Fさん自身の能力(エンパワーメント)が活かせるような働きかけ(エンパワーメントアプローチ)につながっていきます。それが利用者主体の自立支援になるのです。
日々の現場でのリアルだけで解釈すると、解答がブレたり、余計な思考に惑わされて受験勉強が進まなかったりすることもあります。
これは、介護福祉士になるための試験ですから、介護の基本視点を基軸に考えていくことが求められるということを、念頭におきましょう。
未来の介護福祉士サポーター まぃせ
※第20回介護福祉士国家試験(筆記&実技)合格