認知症の理解

認知症高齢者に対しても
「自立支援」「利用者主体」という
介護の基本のもと、対応することが大切です。
問題77
介護老人保健施設に入所した認知症高齢者が、夜中に荷物を持って部屋から出てきて、介護福祉職に、「出口はどこか」と聞いてきた。介護福祉職の対応に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
選択肢
1.「今日はここにお泊りになることになっています」と伝える。
2.「もうすぐご家族が迎えに来るので、お部屋で待っていましょう」と居室に誘う。
3.「トイレですよね」と手を取って案内する。
4.「どちらに行きたいのですか」と声をかけて並んで歩く。
5.「部屋に戻って寝ましょう」と荷物を持って腕を取る。
オリジナル解説 by まぃせ
事例内容の解釈から見える適切な対応
恐らく、帰宅願望が出てしまった認知症高齢者に対する夜間帯の対応について問われています。
なぜ、敢えて「恐らく」と言ったのか。
「夜中に荷物を持って部屋から出てきて“出口はどこか”と聞いてきた」
多分、家に帰るつもりで出てこられたのでしょう。ですが、この事例の内容だけでは、「家に帰るつもりなのだ」とは言い切れません。例えば、旅行に出かけるつもりなのかもしれない…とか。
要は、介護福祉職の主観で決めつけてはならないということです。
認知症であっても人であり、人として守らなければならない尊厳がある。
認知症であっても、本人の自立を阻害することはしてはならない。
※「自立」については、身体的自立だけでなく、精神的自立(自律)もあることを意識できるようにしましょう。
「自分で決める(自己決定)」ことができるように対応することや、エンパワメントアプローチ(利用者の持っている力を積極的に利用できるように援助する)の視点を忘れてはいけません。
これらを踏まえると…
選択肢1.2は「帰りたいのだろう」、選択肢3は「トイレに行きたいのだろう」という推測のもとでの対応、選択肢5は、本人からの質問に対して応えることができていない対応、ということになります。
いずれも、明確な意思表示が見えないまま、状況判断で対応してしまっている様子に見受けられます。
一方で、選択肢4は、「出口はどこか」に対して「どこに行こう(どこに出掛けよう)と思っているのだろうか?」ということを本人に問いかけて、本人が何を希望しているのか、ということの確認するための声掛けと、利用者に寄り添う対応が「並んで歩く」という表現で示されています。この状況に対して、自己決定ができるように支援し、利用者主体で対応を試みている選択肢の内容といえます。
というわけで、正答は選択肢4となります。
実際には、「部屋から出てきたのは何回目だろうか」であったり、「この方はこういう風に出てきたときは本当はトイレに行きたいということなんだ」ということを数々の対応の中で知っていたり…等。
もっと詳細を掘り下げることで、各選択肢に対する解釈は変わってくるかもしれません(ですから、「適切なもの」ではなく「最も適切なもの」という問われ方になっていると思います)。
しかし、試験では、このように深く状況を推察しすぎると深みにはまって、解答を誤ることが出てくる可能性もあります。
また、正答である選択肢4の問いかけも「どちらに行きたいのですか」だと「出口って本人が言ってるじゃん!」と思いたくもなります。「どちらに出掛けるのですか」「どこかに出掛けるのですか」「なぜ出口を探しているのですか」等の問いかけ方のほうが、よりスッキリと解答することができるでしょう。これが、「ひっかけみたいなものが多い」と感じられる元かもしれませんね。
事例で提示されている内容を基に、シンプルに解釈していけるように、或いは「試験問題の文章ってこういう感じなんだ」と慣れることができるように場数を踏んでいくことをしておくとよいでしょう。
場数を踏むとは、つまり、テキストを読んで暗記するのではなく、問題を解いていくような実践的な勉強方法をとる、ということです。
第20回介護福祉士国家試験(筆記&実技)合格
未来の介護福祉士サポーター まぃせ